side 澄


「なんで言うことが聞けませんかね……。」


そう言う目の前のやつにため息をつく。


「はあ。勝手に言ってろ。先に約束を破ったのはお前らだ。」

「……あなたを閉じ込めた意味が分からないのですか?」

「どうせ警告、だろ?」

「ご名答ですけれども……、それが分かっているなら近づかないでいただけます?」

「もう、近づかねーよ。約束したし。」

「そうですか。まあ、あなたは僕との約束を破ったも同然です。警告しましたからね?次はちゃんと近づかないようにしてあげますよ。」

「……一つ言いたい。」

「何ですか?」

「なんでお前はそんなにあの子に執着するんだ?俺は考えたんだ。あの時から。あの契約の時から。最初は違うと思っていたんだがな。でも、考えれば考えるほどあてはまっていくんだよ。」

「なんの話しでしょう?」

不思議そうな表情の委員長を殺したい。でも、俺にはその資格もない。すみれちゃんに近づくなんて本当はトンデモナイことだ。何故なら俺がすみれちゃんを苦しめた『最初のきっかけ』だからな。


俺は唇を噛みながら無表情をつらぬく。


この償いのために、俺は……。

ポケットから化粧水を染み込ませたハンカチを取り出した。

「お前の化けの皮、剥いでやんよ。……この化粧水でな。」

「おや?気がついていましたか。小田巻クン。」


目の前でにやりと笑うソイツに舌打ちする。

ああ。俺は馬鹿だ。


なんで!!俺はこんな簡単なことに……!!

「さあ、この秘密を知った君をそのまま帰せませんね?」