「好かれたい。抱きしめたい。一緒にいたい。そういう顔をしていましたよ?」
「っ!?」
そんなはずはない!!
好かれなくていい!!
この手に彼女がいなくていい!!
彼女の隣りは俺じゃなくてじゃなくていい!!
全部、こいつからの悪魔のささやきだ!!
俺はこんなこと、思ってなんか‥‥‥!!
「そういう顔、素敵ですね。」
「うるさい!!」
違う!!
彼女が幸せであれば!!
俺がそばにいちゃいけない!!
俺は償うために今ここにいるんだ!!
好きだ!!
だけど、この感情は持っちゃいけないんだ‥‥‥。
ダメなのに、ダメなのに。
どうして彼女の姿が思い浮かぶんだ‥‥‥。
どうして彼女の声が愛おしい‥‥‥。
どうして彼女の笑顔がほしい‥‥‥。
『俺だけのものにしたい』とそう願ってしまうんだ‥‥‥?
ふと蘇るのはいつしかすみれちゃんに言った『君の全てがほしい』という言葉。
あれは俺の気持ち、なのか
違う、俺は彼女の幸せだけが‥‥‥。
彼女が笑ってられる世界に‥‥‥!!
「そういえばこの間、すみれちゃんに『俺は犯人じゃない』とおっしゃっていましたよね?」
「それが‥‥‥、どうした。」
「真に彼女のことを守りたいなら『俺が犯人だ』と言うべきだったのでは?」
「‥‥‥!!」
その、通りだ。
『俺が犯人だ』と言ってしまえば、彼女は素直に俺を恨み‥‥‥、
そして委員長と幸せになるだろう。
でも、俺があんなこと言ってしまったから訳がわからなくなって
彼女は苦しんでしまう。
なぜ俺はあんなことを言ったんだ!?
「『すみれさんを手に入れたい。』そういう感情が顔に出ていましたよ?『澄くん』。」
「っ!?そんなはずは!?」
そんなこと、俺は思ってない。
なのに、どうしてこんなにも動揺するのか。
どうして素直に彼女の幸せを願えないのか。
どうして‥‥‥、俺のことを好きになってほしいのか。
委員長の作る孤独で人工の幸せを『偽り』なんて呼んでいたけど、
彼女にとってそれは『幸せ』じゃないか?
彼女が幸せと感じるならば。
秋月と委員長のああいうことしてたのだって、
彼女に見せなくてもよかったじゃないか。
知らないほうが幸せなことだってある。
俺は‥‥‥、ほしい、のか?
すみれちゃんを。


