そして、昼休み‥‥‥、
「それで、用事は何、かな?すみれちゃん。」
「‥‥‥やってない。」
やってない‥‥‥。私は!!
「茜をイジメたことなんてない!!やってない!!なのに、私が茜をイジメたって、噂が‥‥‥。」
やって、ない、のに‥‥‥。
こんな話を広めるのは茜ぐらい。
ひいては、茜の言った『彼』‥‥‥、そう、小田巻くん以外ありえない!!
「茜は『彼からは逃れられない』って!小田巻くんがこんなことしろって、茜に命令したの!?茜のこと利用しているの!?」
「つまり、それは俺のせいだって言いたいの?」
「‥‥‥うん。茜にそうしろって言ったんでしょ!?」
「‥‥‥そっか。そう思われたか。ねえ、じゃあ、俺はこの間何で忠告したと思う?」
「‥‥‥この間の昼休みのこと?」
この間、『気をつけて』って言っていたときのこと?
確かに小田巻くんが犯人ならば、忠告しなくてもいい。
‥‥‥何で?
何で、彼は、こんなことを言ったの?
そして何で途中で『忠告』をやめてしまったの?
「‥‥‥すみれちゃん、俺のことは信じなくてもいい。けど、これだけは言わせて。」
「‥‥‥。」
「俺は‥‥‥、犯人じゃない。」
「そんな、こと‥‥‥、言われたって。」
『信じられない。』
昨日から何度も言おうと思っていた言葉。
真の犯人が彼なんて、茜の言ったことから確実なのに。
それが彼の『忠告』、今の言葉、そして‥‥‥、真剣な表情を見ると、ウソなんて思えなくて。
__小田巻くんのこと、キライなはずなのに。
「いいよ。信じなくて。」
「‥‥‥えっ?」
「俺が犯人でいいよ。俺が全部悪い。ただ君が幸せであれば、俺はそれで‥‥‥。」
「何を言って‥‥‥。」
「とにかく周りの人には気をつけて。友達にもクラスメイトにも、そしてお昼を一緒に食べてる友達にも。」
「‥‥‥罪をなすりつけるの?私の友達に‥‥‥。」
やっぱり、小田巻くんじゃないの?
私に変な噂立てたの‥‥‥!
私の周りの人に気をつけろなんて!!
「和は私を信じてくれた!!神宮寺くんは私と楽しく話してくれた!!そんな人たちが犯人かもだなんて思えない!!犯人はむしろ!!」
小田巻くんじゃないの‥‥‥?
『犯人でいいよ』なんて言って私に小田巻くんが犯人じゃないみたいに思わせたかったんじゃないの?
「それで、いいんだよ‥‥‥。すみれちゃん。」
「っ!!」
何で、そんな寂しい顔するの!?
そもそもの目的は?
こんなことしても私は小田巻くんをキライになるだけなのに。
何で付き合ったばかりの茜にこんなことを?
ああ!!もう!!私はさっきから『何で』ばっかり!!
‥‥‥聞かないことには、始まらないのに。
でも、私は聞けない。
そのことに関してだけは、声が、出ない‥‥‥。
「好きだよ。」
「‥‥‥?」
えっ?何?表情が変わって‥‥‥?
「好き。好き好き好き。大好き。君に溺れてるんだ。ずっと。好き好き好き。大好き。」
「ひっ!」
「どうしたの?大好きなすみれちゃん。どんな君でも魅力的だよ。君の全てがほしい。
だから君を一人ぼっちにしたかった。どう?これで満足?俺のものになってくれる?」
一歩踏み出した小田巻くんがさっきまで平気だったのに
いきなり人が変わったみたい‥‥‥。
イヤ‥‥‥、イヤ‥‥‥!!
「‥‥‥ヤ、ヤダ。」
やだやだやだ!!来ないで!!
『重い愛』
これが私を恐怖に突き落とす。
こんなの‥‥‥!!
「違う!!!」
そう言って、私は駆け出していた。
そんな様子を彼は見ていた、気がする。
そして‥‥‥、
私をさっきからじっと見ていたのは、誰?