それから、何週間か経ったときのこと。




「あ、今日は購買のパンなんだ。」

「うん。たまにはいいかなって。」



私達は昼休みのたびに会っていた。


お互いに話したり聞いたり‥‥‥。


茜に嫌われていたショックが、委員長との時間で癒やされていく。


「ねえ。平野さん。」

「ん?何?委員長?」

「平野さんは僕のこと、なんで名前で呼んでくれないの?」

「えっ?委員長は委員長じゃん。」

「僕は委員長って名前じゃないし。」




いつもはしっかり者なイメージの委員長が珍しくすねてる‥‥‥。

まあ、ちょっとぐらいなら‥‥‥。

やっちゃいけないことでもないし‥‥‥。



「じゃあ‥‥‥、神宮寺(じんぐうじ)、くん?」



神宮寺(じんぐうじ)。これが、彼の上の名前だ。



「駄目。大和って言ってよ。平野さん。」

「ごめん。それはイヤかな。」


大和、その名前を思い出しただけで私は‥‥‥。


「じゃあ、代わりに俺がすみれちゃんって言っても怒らない、か?」

「えっ?そのぐらいなら別に大丈夫。ね?神宮寺くん?」

「よかった。すみれちゃん。」




おかしそうに笑っていた私たち。






‥‥‥でも、いつもの平穏を乱すのはいつもあの人だった。