「おはようございます。すみれさん。今日のお昼をご一緒に、」
「ごめん。茜。一人で食べたいから。茜の方こそ彼氏と一緒に食べなよ。」
「でも‥‥‥。」
「一人で食べたいの。」
「はい‥‥‥。」
あの日以来、私は茜を避けるようになった。
そんな私に和は何も言わずに隣にいてくれた。
小田巻くんはもう私に絡んでこなくなった。
茜とイチャイチャすることもなく、ただ前の関係のよう。
小田巻くんはなんで私なんかに告白したかは分かんない。
分かんないけど、もうどうだっていい。
平凡な日常、これが守られるなら。
あの時みたいなことにならないなら、なんでもいい‥‥‥。
そう、全ては、元通り‥‥‥。
「えっと‥‥‥、ひ、平野さん?」
「委員長?どうしたの?」
立ち入り禁止の屋上の手前にある階段で一人、お昼を食べていた私に、委員長が話しかけてきた。
「いや‥‥‥、僕、いつもここで食べてるからさ。」
よく見たら、委員長の手にはお弁当があった。
「あ、ごめんね。場所、取っちゃったみたいだね。今どくよ。」
お弁当箱を片付けようとフタに手を伸ばす。
「え、待って。あの‥‥‥、一緒に食べてもいい、かな?」
あ〜、確かに追い出したみたいで委員長からしたらイヤかもね。
「うん。」
「ありがとう。」
普段はあまり話さない委員長との会話は、新鮮で面白かった。
「この間、先生に呼び出されたときにいけなくてごめんね?」
「いいんだ。大したようでもなかったみたいだったし。」
「それでも悪いよ‥‥‥。そうだ!今度さ、なんかジュースおごってあげる。」
「いや‥‥‥、おごるとか、そんな、いいよ‥‥‥。」
「駄目だよ。借りは返すってお母さんによく言われてるから!」
「あ、そっか‥‥‥。」
ふと隣にいる委員長の顔を見ていると、肌が白くて‥‥‥、
「もしかして委員長、化粧してる?」
「化粧?い、いや!!してない!!してないよ!?」
「え〜?ホント?」
「‥‥‥してるって言ったら気持ち悪いとか、思う‥‥‥?」
「えっ?別にいいと思うけど。校則でもそれは自由だし。」
もしかして、
それ関係でイヤなこととかにあったりしたのかな‥‥‥?
「そっか‥‥‥。変わんないな。」
「えっ?なにが?」
「ううん。こっちの話。ねえ、平野さん。」
「何?」
「また明日も、一緒に食べない?」
「いいよ。一緒に食べよ。」
こうして委員長と私は仲良くなっていった。


