「次の方、どうぞー。」


その声に従って、私達は観覧車に乗り込んだ。


「今日は楽しかったね。」

「そうですね。」


向かい合った茜の顔はどこか暗かった。


「ねえ、茜。」

「はい。」

「勘違いだったら申し訳ないんだけど、なんか気にかかるようなことあった?」

「えっ?」

「いや、なんか顔が暗くて、無理してたら悪いなって。」

「ああ。そういう‥‥‥。これはすみれさんに言うべきなのか分からなかったのですが‥‥‥、言ってしまってもいいですか?」

「うん。言って。友達のことは受け止めたい。」

「そうですか。‥‥‥私、好きな人がいるのです。」

「えっ!?」


あ、茜に好きな人が!?


「実はその好きな人‥‥‥、Aさんとしますね。そのAさんには好きな人がいるのです。」

「ええっ!?」

「片思いですが、私、この後告白しようと思っていて‥‥‥。」

「こ、この後!?」


その人に告白するの!?


「が、頑張って。」


そんな無責任な言葉しか言えなかった。


そんな無理な告白やめたほうがいいよ、なんて口が避けても言えない。


だって、それを承知の上で告白しようとしているのだから。


そんな強い彼女に、こんなありきたりで責任なんてこれっぽちもない言葉を吐く私は‥‥‥。


でも、そんな私に茜は微笑んだ。


「ありがとうございます。」


そういう声はなんだか泣きそうになっているかのようで‥‥‥、儚かった。


「‥‥‥。」

「‥‥‥。」


それっきり黙り込んでしまった密室は気まずくて、つい聞いてしまった。


「あのさ、ちなみにそのAさんって誰‥‥‥?あ、いや、言いたくなかったらいいんだけど!!」


その回答はすんなりと得られた。


「えっと、今日、一緒に遊んだ人です。」


もじもじとしながら話す彼女は可愛かった。

可愛かったがゆえに私は信じられないでいた。



そんな彼女の好きな人は‥‥‥、小田巻くん!?