でも優里の笑顔は、食べ終わって僕らが帰ると、きっと無くなってしまう。

だから僕らは、いつも優里のそばに居た。


休みの日は三食作りに行くし、三人で食べる。
単身赴任の父が帰ってきている期間は、四人で。

でも毎日そう過ごしていて、彼女の両親が帰ってきたのは年に一度だった。


「寂しくないの?」


「...2人の顔、思い出せないの」


君は、そう、漢字の練習をしながら言った。


「でもね、律と律くんママが来てくれるからいいの」


「ほんとう?」


「うん。ゆり、一人じゃないから」


なんて可愛いんだろうと思った。
鉛筆を握る、自分より小さな手。

くりくりとした、大きくて何も穢れを知らない目。


にっこりと笑う赤い唇と、すべすべの頬、真っ白な肌。

光を向けても茶色くならない綺麗な黒色のロングの髪。


―――絶対手に入れてやる。


子供ながらそう思ったのを今でも覚えている。