「...優里です」


「ユリ...ほう、いい名前だねぇ」


そこに座りたまえ、そう言って彼はソファーに案内をする。

そして同じ室内にあるキッチンで、なにやら紅茶を入れた。


「君は、リツに監禁されているんだろう?」


「...そうですが、何か」


「“自由とは、法の許す限りにおいて、行動する権利である。”三権分立を考えたモンテスキューの、法の精神という本の一文だ」


頭が良い君ならわかるだろう?と、彼は紅茶と茶菓子をローテーブルに置く。


「君は法の許す限りにおいて行動する権利を、リツによって侵害されている」


彼が紅茶を飲む。
私は未だに、紅茶に手をつけられない。


「そして、リツのいない今、君は逃亡することができる」


これは君にとって悪い話じゃない、そう言って彼が茶菓子を1つ手に取る。

それは、クッキーだった。


...クッキーは、長時間加熱処理がきちんとされる。
私も食べようと、同じクッキーを取った。


「単刀直入に言わせてもらおう。」


“君とリツは離れた方がいいだろうねぇ”