「...そんなに強く噛んだら、痕がついちゃいます」


「僕のものっていう印が必要でしょ?」


「私が噛んだら、きっと隠すくせに」


そんなことないよ、なんて力弱く笑う。図星だったのだろう。

その香水の女に、バレないために。


「ねぇ優里、君からキスして」


「...どこに?」


「どこでも、君が好きな場所に」


そう言われたので、どこがいいだろうと考える。
唇は安直すぎる。

彼をパッと見て、首筋にキスをした。


「...首?」


「すらっとしてて、キスしたくなる」


キスしたそこに、手を這わせる。
当初願っていた、ここから出るというのはもうなかった。

今はただ、この男と私の関係性を知りたい。

なぜ彼が過去の私を知っているのか。
そして、なぜ私は覚えていないのか。