左手に花束を持ち、ソワソワと時計と搭乗ゲートを見つめる。そろそろ飛行機が到着するはずだ!僕の胸がギュッと熱くなっていく。

僕は今、オーストリアに留学した恋人の音羽(おとは)を待っている。今日、三年間の留学を終えて音羽は日本に帰ってくる。楽しみで、昨日はあまり眠れなかった。

三年間という遠距離恋愛の中、音羽とスカイプで数え切れないほど話したけど、会うのは三年ぶり。緊張と喜びが一気に高まる。

「和馬(かずま)くん!」

愛しいソプラノの声に顔を上げれば、黒いふわふわした長い髪にえくぼが可愛らしい音羽が笑顔を見せてやってくる。

元気だった?ずっと会いたかったよ。大好き。たくさん言いたいことはあったけど、僕の口からは何も出てこなかった。代わりに音羽を強く抱き締める。三年ぶりに触れた音羽の体は、こんなに華奢だったっけと思うほど壊れてしまいそうで、ガラス細工を触れるような優しいハグに変わっていく。

「ただいま」