今日は僕の誕生日だ。誕生日って一年で一度しかない特別な日だから、わくわくしちゃう。特に大切な人がいれば尚更……。

「ごめんなさい、待った？」

待ち合わせ時間ぴったりに、水色のワンピースを着た恋人の菜々（なな）が走ってくる。僕は「そんなに走らなくても……」と笑いながら、ゼエハアと荒い息を吐く菜々にペットボトルに入った水を差し出した。

誕生日の今日、運良く休日だったため、菜々とデートすることにした。菜々とは会社の同期でずっと入社した頃から片想いしていたから、おつきあいできて毎日が幸せだ。

「それじゃあ、行こうか」

僕が手を差し出せば、菜々は少し恥ずかしそうにその手を握ってくれる。そういうところが可愛くてたまらない。

「映画、楽しみだな」

隣で笑う菜々の笑顔を守りたいと思いつつ、僕と菜々は映画館へと向かった。

菜々は僕が出会った頃、結婚をしていた。でもその相手はモラハラ旦那だったらしく、菜々はどんどん暗くなって心配になり、僕はモラハラ旦那が許せなくて、菜々を助けることを決めたんだ。