「見て!大橋くんだ。今日もかっこいいよねぇ。そう言えばけ、昨日、ゲーセンでウチの学校の生徒が他校生に絡まれてたんだけど、大橋くんが助けたらしいよ?」
ほらね。今も聞こえてきた。
……こういう優しい一面もあるっていうウワサ。
あたしはつい、ギャルの話に聞き耳を立ててしまう。
「さっすがぁ!大橋くん、ケンカ強いし、怖いものなしだもんね?見たかったなぁ〜」
「相手、すっごく強かったらしいんだけど、大橋くん、全然ケガしてないよね。あれだけのイケメンで、優しくって、ケンカも強いって最強だよね。あたしも守ってほし〜い!」
うん、うん。
近くで話を聞いているあたしも、思わず相槌を打ちそうになった。
「ねぇ、ちょっと大橋くんに話しかけに行ってみる!?」
そう言ってギャルたちが、いっせいに教室を出ていく。
その声につられて、あたしも教室から廊下を見る。
その先に、6人のヤンキーグループの男子が、ぞろぞろと連れ立って歩いているのが見えた。
6人とも規定のシャツではなく、原色系の派手なシャツを着ている。
大声で騒いでいる人もいれば、周りの生徒を睨みつけている人もいる。
その中に……大橋くんの姿を見つけた。
5組の大橋くんの教室は、廊下の一番端にあるから、1組のあたしの教室の前をよく通るんだよね。