取り囲む女子たちには目もくれず、新條は真っ直ぐダンス係の方へ向かって来る。

「遅いよー! あっちゃんがいない間、あっちゃんのクラスは月影先輩一人で教えてくれてたんだよ!」

 小松君のその叫びで、律の元へ一直線に走ってくる新條。

「すみません、任せきりになっちゃって」

 新條はそう言って伏し目がちになった。

 ――あ、ちょっと可愛い。

「いや、別にいいけど……」
「でもドラマの撮影今日でクランクアップだったんで、明日からずっと参加できます」
「そ、そう」
「たまには俺を頼ってくださいね」

 新條の笑顔が、とても眩しい。

「あ、先輩じっとして……」

 律の頬に、そっと新條の手が触れる。
 少し右に傾いた顔がどんどん迫ってくる。

 ――近い!

 唇に目が釘付けになる。

 ――えっと、ちょっとまって。

 鼻先が触れ合う寸前。

 ――みんなが見てる前でー?

「頬にまつ毛、付いてましたよ。すげっ、まつ毛長っ!」

 新條のその声で、恥ずかしさが襲ってきた。

「………………」

 ――いま私、何されると思った……?

 律は、ものすごく顔が赤くなっているという自覚はある。突き飛ばしたり蹴飛ばしたりして逃げようとしなかった自分が信じられない。