「そこまで、何を考えてるんだか……。律は真面目過ぎるのよ」
「超ド真面目なお母さんに言われたくなーいっ」


 反論しながらも律は思った。私ってば、新條のことばかり考えて重症だ。ダンスのことだけを考えよう。うん、そうしよう――。

 そして体育祭まであと三日となった頃。
 ついに律は思いついたのだ、ダンスで大人数を活かす方法を!
 それは、全員で円になり肩を組みウェーブを表現することだ。一体感が出るし、素人から見てもわかりやすい凄さだと律は考えている。

「いいじゃん、やってみよ!」

 律が提案すると、ダンス係の皆が賛成してくれた。
 会議室から飛び出し、運動場で練習する。だけど……上手くいかない。

「動きは簡単だけど、タイミングが難しいね。ま、何回か練習すればどうにかなるでしょ!」

 深川さんがそう言って明るく笑い飛ばす。

 ――大勢で合わせるって大変だなぁ。けど、こういう苦労も楽しい。ダンスってやっぱりワクワクする。

 律は窓の外の青空をのほほんと眺め――次の言葉で硬直した。

「あ、あれアサヒくんじゃない?」

 校門付近で、キャーキャー騒ぐ女子生徒たちが車を取り囲んでいる。
 そうだ、あの高級そうな車は新條のマネージャーの。
 車から降りてきたのは、やっぱり新條だった。