だからこそ、裏切りたくなかった。きっと律のスキャンダルを知った瞬間、やっぱりアイドルなんて応援するんじゃなかったと後悔しているだろう。
 律は下唇を噛む。

「デビューできたのも今の自分があるのも、先輩のお陰です。それなのに、恩を仇で返してしまいました。熱愛報道を出してしまって、本当にごめんなさい」

 新條は深々と頭を下げた。

「今更遅いよ、私の人生はもう終わったの。新條は良いよね、アイドルを続けられるんだもん。私はこれからどうすればいいのよ!」

 芸能界なんてうんざりなはず、だった。律は心のどこかでアイドルとしてやり直したいと思っていることに、口を衝いて初めて気付いた。

 ――どうしたらいいの。私は、どうしたらいいのよ。誰か教えてよ。

 律の目から、涙がこぼれ落ちていく。
 泣きじゃくる律を落ち着かせるように、新條はそっと頭を撫でた。

「俺は、先輩がアイドルだったから出会えたし尊敬することもできた。アイドルになってくれたことに感謝してます。でも真剣過ぎて無理してるように感じてました」
「無理なんてしてないよっ」