律が踊り終わるとそこら中から拍手が起こった。気付けば人だかりができており、ぐるりと囲まれている。音につられて学校中の生徒達が見に来たらしい。
 
 その人だかりの中から、ヘアアレンジもメイクもバッチリな女の子が出てきて律に近付く。律と同じクラスの今井さんだ。一体何を言われるのだろうと律は身を固くした。

「もしかして、今のダンス、全部月影さんが考えたの?」
「うん……そうだけど……」
「深川ちゃんから、月影さんの振り付けが凄いって聞いてたんだ。本当だ、まるで振付師みたいだねっ!」

 まさかの言葉に驚きすぎて、律は声が出ない。ついこの前、アイドル雑誌に載ってる女の子と比較され馬鹿にされたばかりだからだ。

「私、真似して踊りたい」
「私も」
「あたしも!」
「教えて~」

 今井さんと仲の良い子達が、律の傍に寄ってくる。好奇心いっぱいのその表情からは、微塵も悪意は感じられない。
 クラスの子達が自分に抱くイメージを良い方向に変えていっているのが実感できた。

 あの熱愛報道が出てからというもの、理想のアイドルになれなかったことに絶望しアイドルだったことを忘れたかった。だけれど今こうして、ダンスを通して皆の役に立てている。アイドル活動にも意味があったのかな……。律はそんな気がして、笑顔で答える。

「いいよ」