その子が、雑誌を抱きしめて天を仰ぐ。

「せっかく同じ学校なんだから、一瞬でいいから付き合いたい……てのが本音だけどさ。告白して木端微塵に振られるってのも、幸せかも……」

 新條に夢みすぎ。やめときなよ、あんな最低な奴。
 律はそう言ってあげたくなる。

 呆れた顔で眺めていると、ある女子と目が合った。
 今井さんだ。目立つグループのリーダー的存在の女子。今井さんは隣に立つ女子と何やらヒソヒソ話を始める。
 その声は律の耳に届いた。

「転校生の……ほら、名前なんだっけ」
「えっとー、月……影……さんじゃなかったっけ?」

 同じクラスだし、転校してきて約一か月も経つのにまだ名前をまともに覚えてもらえてないとは……。いや、いいんだ。その方が私にとっては都合がいいから。

 そう思いながら一人で黙々と弁当を食べている律に、今井さんは近寄ってきた。

「月影さんって、私は興味ないですって顔してるけどさぁ、もっと正直になったら?」

 律は、え? と首をかしげる。

「この世界に、アサヒくんをかっこいいと思わない人間なんていないんだから! 興味ないフリして気取ってるだけでしょ。本当はかっこいいと思ってるんでしょ?」

「勝手に決めつけるの、やめてくれる」

 クールに返す律。