――顔が整ってるからって、何しても許されると思わないでよね。

 赤いハイライトを入れ毛先を跳ねさせた派手な髪が、風に揺れた。
 Yシャツのボタンは外しすぎて鎖骨が見えているし、ネクタイはだらしなく緩く結んでいる。

 ――髪型と服装だけで、ヤンチャで生意気なのが伝わってくるなぁ。すーっごく不快。

 もうすぐ午後の授業が始まるというのに急いでいる素振りは全くない。それどころか女子たちに向かって意気揚々と片手でピースサインをしている。

 ――性格も、真面目さの欠片もないんだよねぇ。あーあ、ヤダヤダ。

 見た目も中身も律とは正反対な、後輩の名前は『新條(しんじょう)アサヒ』。
 律は新條を嫌っているどころではない。

「一生恨んでやる……」

 誰にも聞こえないようにそう呟き、新條にひたすら鋭い視線を向けた。

「男性アイドル部門一位、新條アサヒ。国民的アイドルグループBREAK OUTのセンター。メンバーカラーは赤。特技はダンスとアクロバット。容姿端麗・多芸多才なトップアイドル~!」

 何でそこまで詳しい情報がスラスラと出てくるんだ……と思って律が視線を向けると、その女子はアイドル雑誌を読み上げていた。

 ――わざわざ解説してくれなくてもいいのに。