二人きりの教室で、律ははるな先生に注意された。

「前髪長すぎよー。顔が映らないじゃなーい。へアピン持ってる?」
「持ってないです。このまま撮らせてください」
「それはダメよ。じっとしてて」

 はるな先生の綺麗な手は瞬時に律の前髪を掴み、ポケットから取り出したヘアピンをつける。律が顔を背けようとすると、はるな先生の手と眼鏡フレームが当たった。

 律が掛けていた伊達眼鏡が床に落下した。律の視界が開ける。「あ……」

「あらー。顔の造形は素晴らしいのに、クマも肌荒れも酷いわねぇ。宝の持ち腐れじゃない。……んん? 誰かに似てるわね。えーと誰だったかしら。……あ! 南野ひ――」

 律は咄嗟にはるな先生の口を手で塞いだ。そしてすぐに後悔した。「違う」と否定すればそれで済んだかもしれないのに、こんなことをしては本人だと丸わかりじゃないか、と。

 南野ひかりだとバレたら、熱愛報道の批判をぶつけられることは免れない、そう思った律は冷汗を垂らした。

 はるな先生は律の動揺を鎮めるように微笑んだ後、律の肩に手を置いた。「そうか……そうだったのね……。どこまでも対照的な二人だと思っていたけれど……」

「へ?」
「禁断の恋、応援するわよ!」