桜色の歌と君。

「綾乃が卒業して、高校生になった時、僕は退院して中学三年生になった。

退院して一番に会いに行こうと思った。でも、綾乃は中三の時のクラスメイトと高校に入ってすぐに付き合った。」

「昴さん・・・?」

図書室での光景を思い出して尋ねると、宮野くんはかぶりを振った。

「ううん、違う人。」

それを聞いてほっと胸をなでおろす。これで昴さんだったら、千草ちゃんがひどく悲しむ。

「昔の話だし、もう吹っ切ったつもりだったんだけど。綾乃に彼氏ができたって知ったときの感情が、さっき久しぶりに顔見た瞬間ばーって蘇って、苦しくなって逃げたんだ。情けないよね。」

宮野くんは小さく笑った。その顔は今も苦しそうで、悲しそうで、触れたら崩れてしまいそうなくらい脆く見えた。

何か、言わなきゃ。

そう思ったのに、声が出てこない。

私の胸の内も、苦しい感情でいっぱいになっていた。

「ごめんね、こんな話。ずっと誰かに聞いてほしかったんだ。ごめん。」

か細く震えた語尾にはっと目を向ければ、宮野くんの目には涙が浮かんでいた。

鼓動が早まって、私は涙を堪えるので精一杯だった。