桜色の歌と君。

雨上がりの屋上は、いつもよりも空気が綺麗な気がする。

お弁当を食べ終えて眠くなったのだろう。宮野くんはイヤホンを耳から外し、フェンスに背中を預けて目を閉じていた。

無防備に眠る寝顔に、そっと手をかざした。ふわふわとしているパーマのかかったような髪にそっと触れる。

膨らんだ髪を押さえつけるようにそっと触って右に、左に、ゆっくりと撫でた。指に伝わる感触が気持ちよくて、子犬を撫でているような気分になった。

と、宮野くんの閉じられたまぶたが、ぴくりと動いた。

心臓が跳ね上がり、慌てて手を離す。

宮野くんはゆっくり目を開くと、固まっている私をみて、照れたように笑った。

「ごめん、起きてたんだけど。どうすればいいかわからなくて。」

決まり悪そうにそう言った宮野くんに、私はいたたまれなくなって勢いよく頭を下げる。

「ご、ごめんなさい…!子犬みたいだから、その…」

自分でも情けなくなるくらいに無理のある言い訳に、消え入りそうな声を発しながら私はうつむいた。

反応が怖くて体がちょっと震える。

息を吸う音がして、私は身構えた。

聞こえてきたのは、高らかな笑い声だった。

「えっ」

驚いて思わず顔をあげる。

宮野くんは声をあげておかしそうに笑っていた。

こんなに笑っている彼を見るのは初めてだったから、私は声も出さずにじっとその様子を見つめていた。