桜色の歌と君。

いつもなら私は宮野くんと少しタイミングをずらして教室に帰るのだが、今日は地理の先生と廊下で鉢合わせてしまい、三人で話していたらそのまま一緒に教室の前まで来てしまった。

本鈴が鳴るまで教室の外で待機する先生を残して宮野くんと教室の中へ入り、クラスメイトの視線がまばらに向けられたのを感じた時に、そのミスに気が付いた。

数人の女子生徒が、意味ありげな表情で私と宮野くんの顔を交互に見たが、すぐにチャイムが鳴ったため何か言われることもなく授業が始まった。

が、私は授業どころではなかった。胸の内に嫌な予感が広がり、心は不安に支配された。

クラスメイトは、昼休みに教室を出て行く私と宮野くんを不思議には思っていたようだが、教室ではほとんど話さない二人だから、一緒にお弁当を食べているところまでは考えが及ばないはずだった。