桜色の歌と君。

「宮野くん」

名前を呼ぶと、少し眠たそうに小さく揺れる瞳と目が合った。

お昼を食べてお腹がいっぱいになると、温かな日差しは睡眠薬のように私たちの眠気を誘う。

「お家で勉強の合間に歌詞書こうと思ったんだけど、何も思い浮かばなかった。何から書けばいいんだろう。」

昨夜の話だ。英語のワークを復習し終わり、ふと歌詞を書いてみようとルーズリーフを机に広げてみたら、驚くほどに何の言葉も出てこなかった。

正直、歌詞を書くことは簡単だと思っていた。何となく言葉を並べればそれらしいものができるのではないかと、過信してしまっていたのだ。

実際は単語が頭の中で浮かんでは消え、また浮かんでは消えていくの繰り返しで、歌詞を作るどころか、言葉の一つも生み出すことができなかった。

宮野くんは、「そっか。」と小さくつぶやき、「うーん。」と唸りながら空を見上げた。

日が滲んだ青空は眩しく、彼は柔らかく細めた目を閉じた。