桜色の歌と君。

「宮野くんは、純粋に良い音楽を作りたくて提案したんだよ。私も、その気持ちに応えたい。」

その言葉に嘘はなかった。

それに、デートという言葉の響きは、私には甘すぎる。

これはデートじゃない。勉強なんだ。社会科見学くらいの心持ちで臨まないと。

「小春ちゃんは真面目だなぁ。私だったら昴さんと二人きりで出かけるってなったら完全にデート気分になって浮かれちゃうよ。」

へにゃあっと顔を崩して笑う千草ちゃんに、私はくすりと笑みをこぼした。

「昴さんとは、どう?」

私の反撃に、今度は千草ちゃんが頬を赤らめる番だった。

「何もないよ。昴さんの好きな本の話をひたすら聞いてる。でも最近は私の話をすごく聞いてくれるようになって、うれしくて、いつもたくさん話しちゃってるかも。」

自分の話になった途端威勢をなくして声を潜める彼女に、愛しさが胸を駆け上がり、心が和らぐ。

「すごく、優しく聞いてくれるの。声も表情も、柔らかくて、優しいの。」

大切な思い出と感情を、優しく転がすように言葉にする彼女の姿は、淡い桃色に包まれているかのように幸せに満ちていた。

恋をする女の子が可愛く見えるというのは、まさにこのことだ。

「二人がうまくいくといいな。」

「ありがとう。」

千草ちゃんは少し照れたように、でもうれしさを顔いっぱいに浮かべながら微笑んだ。