桜色の歌と君。

「デートじゃん!」

ファミレスに、千草ちゃんの声が高らかに上がる。

「しっ!」

慌てて彼女の口を押えると、私はさらに声を潜めた。

「デートじゃないから!友達同士で出かけるんだよ!?」

「そうだけど、傍から見たらデートだよ。」

氷をたくさん入れたオレンジジュースをかき混ぜながら千草ちゃんはにやりと笑う。どんな表情をしても彼女は可愛い。

私たちは勉強会という名目のもと、学校近くのファミレスに二人で来ていた。

屋上での出来事を全部話すと、千草ちゃんは足をバタバタさせて自分のことのように喜んだ。

「きゅんきゅんするなぁ。」と顔を綻ばせる彼女に、「そういうのじゃないから。」とさっきから百回くらい訂正している。

「私ずっと思ってたんだ。小春ちゃんと宮野くんはお似合いだって。」

ふふふと千草ちゃんは微笑んでオレンジジュースを吸い込む。

「だから違うって。」

「顔真っ赤だよ。」そう声を弾ませる千草ちゃんに、私は諦めて小さくため息をついた。

だめだ、完全に楽しんでる。