桜色の歌と君。

「そうだね、そっちの方がやりやすそう。」

「楽しみだなぁ。」彼の顔からはみ出しそうなくらいに大きな笑顔を見ていると、不安が薄れて、ワクワクした感情に心を支配されていく。

「どんな曲がいいかな。宮野くんが歌うなら、宮野くんが好きなような曲にしたい。」

「うーん。僕はバラードが好きかな。恋愛系の。」

恋愛。その甘い響きに、胸の奥がざわめいた。

「私、わからないよ。」

「僕もわからないよ。でも一番ウケもいいと思う。特に片思いとか、失恋の曲はね。最近多いでしょ?」

「最近の曲、何も知らない。」

「そうなの?音楽好きなのに?」

驚いたように目を見張る宮野くんに、首を縦に振った。

宮野くんは何かを考え込むように視線を宙に彷徨わせると、「あ。」と小さく声を上げた。

「そしたら、夏休み一緒に勉強しようか。」

「勉強?」

「うん。一緒にCDショップに行こう。最近流行りの音楽がたくさん置いてあるからさ。」

名案でしょ?とでも言いたさげな顔で私の顔を覗き込む宮野くんに、私はパクパクと口を動かした。

それって、それって。