桜色の歌と君。

「花咲さん。」

宮野くんの柔らかい口調が一転して、言葉に緊張と真剣さが宿ったのを感じて身構える。

彼は起き上がって私に目線を合わせた。

見惚れてしまいそうになるほどに、その瞳は青空を吸い込んだように透明で、それでいて情熱を宿したかのように力強く揺れていた。

「曲を、作ってくれないかな。」

思いもしなかった言葉に、しばらく声を失ったかのように私は固まった。

「曲?」

「花咲さんは本も好きだし、詞も書けるんじゃないかなって思ったんだけど、だめ、かな?」

子犬のように瞳をくるりとさせて上目遣いで見つめられ、言葉が喉元でぎゅっと詰まった。

その顔と聞き方は、ずるい…

憎らしくなるほどにしゅんとした様子を見せる宮野くんは、比喩とかではなく本当に子犬のようだった。その姿がたまらなく愛しくなって、次の瞬間私は「うん。」と頷いてしまっていた。

「本当!」

ぱぁっと、花火が上がるように宮野くんの顔が光り輝いた。

言ってしまって、少し遅れた後悔が身体をせり上がってくる。

「できるか、わからないけど。」

「大丈夫。文化祭は夏休み後だし、時間はいっぱいあるよ。僕も手伝う。」

宮野くんの真っすぐな瞳でそう言われると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。

「わかった。頑張ってみる。」

「よし。まずは作詞から始めるのはどうかな。」