桜色の歌と君。

「神谷昴さんっていうの。」

千草ちゃんは愛おしそうに、優しく撫でるようにその名前を口にした。

「クールそうに見えるのに、本を読みながら目に涙浮かべてる姿見て、一瞬で好きになっちゃって。不純な動機でごめんね。」

千草ちゃんの言葉に、私はかぶりを振った。

「すごく素敵だと思う。私は恋したことないから、羨ましい。」

「ありがとう。小春ちゃんは優しいね。」

そう言って、少し切なさを帯びた微笑みを見せた千草ちゃんに、何だか泣き出しそうな気持ちになりながらも、もらった言葉がうれしくて、私も微笑み返した。