桜色の歌と君。

図書室を出ると、廊下の生温い空気が肌にまとわりついた。

「最近暑くなってきたよね。」

宮野くんも同じように感じたのか、そう言って顔をしかめる。

「あの。」

空気を小さく震わせるように発したか細い声に、宮野くんは「ん?」と首を傾げた。

「ありがとう。私、本当は図書委員やってみたくて。でも勇気なくて。やってみたらって言ってもらえて、うれしかった。」

素直な言葉を伝えることに慣れていない私は、視線を左右に彷徨わせてしどろもどろに口にする。

宮野くんはいつもの温かな眼差しで、私の視線をそっとすくい上げるようにして拾ってくれた。

「きっと楽しいよ。絶対花咲さんを図書委員にしてあげる。」

優しく揺らめいた瞳の奥に、真摯な光を込めて宮野くんは微笑んだ。