桜色の歌と君。

カウンターに座る昴さんの姿を捉えると、宮野くんは「昴。」と声をかけた。

名前を呼ばれて、キーボードを打っていた昴さんが顔を上げる。その瞬間、昴さんの表情が、明かりが灯したように輝いて、彼に対してクールな印象を抱いていた私は心の内で驚いた。

「珍しいな。図書室に来るなんて。」

そう言いながら昴さんの視線が横に動いて、先週会ったときよりも光を宿した瞳と目が合った。

「クラスメイトを紹介しようと思って。この前話した花咲さん。」

「ど、どうも。」

頭を下げると、「ああ、彼女が。」とつぶやき、昴さんも会釈を返してくれた。

「でさ、花咲さん。図書委員やるのはどうかな。」

「えっ」

宮野くんの突然の言葉に、私は思わず声を上げた。

「部活特に入りたいのないって言ってたけど、うちの学校の委員会は生徒主体で仕事も充実してるし、部活動扱いみたいなところあるから。本が好きな花咲さんにはぴったりなんじゃないかなって。花咲さんがやってみたい気持ちが少しでもあるならだけど、どう?」

宮野くんの瞳はどこまでも深く優しさを滲ませていて、何だか全てをわかってもらえているような気持ちになって、泣きそうになる。

「やってもいいなら、やってみたい。」

逸る気持ちを抑えながら言った私を見て、宮野くんはうれしそうに顔を輝かせる。