桜色の歌と君。

「でも、図書委員のおすすめの本コーナーがあって。そこに、好きな作家さんの本はあった。」

「おお、そういうのうれしいよね。」

宮野くんは微笑を浮かべながら、うんうんと頷く。

「本好きなの?」

共感してもらえたうれしさと期待を込めて聞くと、なぜか宮野くんはおかしそうに小さく笑った。

驚いて軽く目を見開いた私に、「ごめんごめん。」と宮野くんは眉尻を下げて微笑んだ。

「花咲さん、すごい目を輝かせてたから、何だかおかしくて。」

笑いを含みながらそう言われて、頬が熱を帯びる。

全く自覚がなかった。そんなにわかりやすくうれしさを表に出してしまっていたのだろうか。

「ごめんね。僕は本あまり読まないんだ。でも親友が本の虫でね。もしかしたら花咲さんの好きな作家さんの本を置いたのは彼かもしれない。僕らの一個上の学年で、図書委員なんだ。」

「今度紹介するね。」

その宮野くんの言葉を最後に、会話が止まった。本鈴が鳴って、先生が教室に入ってきたからだ。

話に挙がった作家は、まだ一冊しか本を出していないデビューしたての新人作家だった。

図書委員の人はどのようにしてその本と出会ったのだろうか。

名前も顔も知らないその人に思いを巡らせながら授業の開始を待った。