桜色の歌と君。

羨ましさと憧れが合わさったような思いを頭の中に巡らせていると、視界の隅で人の気配と共に影が大きく揺れた。

席に座った宮野くんは教科書とノートを机の中から取り出して重ね、机の隅に綺麗に揃えて配置する。細やかな動きが丁寧で上品な人だと思った。

「良い本あった?」

唐突に聞かれ、驚きで心臓が跳ね上がる。

横目に見ていたのがバレただろうか。

「時間が、足りなかった。」

何とか発した声は、情けないほどに上擦っていた。

「そっか、残念。」

私のたどたどしい返しを気にする様子を見せず、宮野くんは言った。

せっかく話しかけてくれたのにそこで話を終わらせるのは申し訳ない気がして、必死に言葉を紡いだ。