桜色の歌と君。

嘘をつくのは嫌だったから、図書室に行き本棚に陳列された本を眺める。

入学した次の日の放課後に二、三時間くらいかけて図書室探索を楽しんだが、本の背表紙をじっくりと眺めて回るには、それでも時間が足りないくらいだった。

私はこの図書室がとても好きだ。中学の図書室の三倍は広さがあるだろう。本の数も多く、書店でも見かけないような小説が並んでいる。

茅色の机と椅子は目に優しく、木材の香りと、窓から差し込む陽だまりの匂いが溶け合って控えめに香る空間は、心を落ち着かせる。

図書委員おすすめの本コーナーに並べられた本を吟味していると、授業開始五分前を知らせる予鈴が鳴った。手にしていた好きな作家さんの文庫本を棚に戻す。