桜色の歌と君。

「いいよね、歌は。」

空気に浮かばせるように、ふわりと言葉を乗せるように、宮野くんはつぶやいた。

とても優しく穏やかな表情を浮かべた宮野くんを見て、胸の内にじわりと温かな感情が広がっていくのを感じながら、そっと頷く。

ふいに首をこちらに向けた宮野くんと、視線が重なり合う。

彼の目に浮かぶ優しい色に、心がふわりと包まれるようだった。

「また、歌聴いてくれる?」

軽く首を傾ける仕草をした宮野くんに、今度は力強く頷いた。

そんな私を見て、朗らかに笑ったその笑顔が、太陽に透けて輝きを放つ。

「ありがとう。よし、そろそろご飯食べるか。」

その一言に、ここへ来た本来の目的を思い出した。

今やっと時間が戻ったかのようにお腹が空く。

談笑しながらお弁当を食べて、一緒に屋上を後にした。

二人同時に教室に戻るのは憚られたので、図書室に寄るからと言って私は宮野くんと別れた。