桜色の歌と君。

彼の周りは、時間が普通よりもゆっくりと流れているのではないかと思うほど、穏やかで、心が落ち着く。

そのせいか、普段なら頭の中でぐるぐると忙しく動き回る言葉が、上手く伝えることのできない想いが、喉の奥でつっかえることなく自然と口から溢れ出てくる。

「サビのメロディがすごく好きだな。高くて、伸びやかで、歌ったらすごく楽しそう。」

「わかる。柔らかいのに抜けるような高音が綺麗だよね。花咲さん、歌うの好きなの?」

「得意とかではないけど。」

「ええ、そうなんだ。」

声を弾ませた宮野くんに、余計なことを言ったかもしれないと思ったが、彼はそれ以上追求することなくまた押し黙った。