愛してしまったので離婚してください

「安心してください。留学が終わるまでは父にはこのことを話しません。留学が終わる頃にはたとえ離婚していても、雅さんさえよければ病院をお任せするしかない状況になると思います。」
病院を残すために、父も利益ある決断をするはずだ。

「日本に帰ってどうするつもりだ。」
低い声の雅。

結婚して2年が過ぎた頃、雅は私に敬語を使わなくなった。
「しばらく好きなことをします。実家には戻りませんし、離婚も知られないはずです。」
「なにをするつもりなんだ」
まだ低い声の雅。

「私、自由になりたいんです。今までの人生、病院のために生きてきたようなものです。なにもかも、一度手放して自由に生きてみたいんです。」
この日のために用意した嘘は、自分でも驚くほどすらすらと口から出た。