愛してしまったので離婚してください

「ちなみに車はレンタカー。車は早く買おうと思ってる。家族で乗れる車。」
雅はどこまで私の状況を知っているのだろうか。
子どもも生まれて、私も雅もいる。そんな未来を当たり前のように思っているのだろうか。

「でも・・・」
雅は私の言葉を遮るように、「シートベルトして」と、私のベルトを締めた。
「ニューヨークの病院で晶の担当医から検査結果も画像ももらってある。今通ってる病院ともこの前コンタクトを取って、今日の診察に同行させてもらうことになってる。勝手に・・ごめん。」
再会してから雅は私に謝ってばかりだ。

「・・・もう・・・わかんない・・・」
ずっと雅に私は敬語をつかってきた。
何となく・・・・妻としての立ち居振る舞いとして、雅が亭主関白や何か結婚願望があるとしたら、年上だし・・・とあれこれ考えていたのに、今はそんな余裕はない。
泣きながら顔を覆う私の手に雅がそっと触れる。

「指輪。」
私の左手の薬指には雅からもらった指輪。
離れてからは私のお守り代わりにもなっている指輪。