愛してしまったので離婚してください

「この辺りは治安も悪くないようですが、それでも気を付けてください。」
玄関の扉を開けてから、少し振り向いて私におくられた言葉に、私は少し泣きそうになった。

鼻の奥がつんとなる。

生まれた時から藤川病院の娘として、周りからかなり距離をとられて生きて来た私にはほとんど友達はいない。
周りの数少ない親友たちも、大学を卒業して就職したばかりで、私のことを相談できるほど余裕なんてない時期。

ニューヨークに来てから話をするのは、週に1度買い物へ行った時の店員さんくらい。

まして、日本語で話をするのもかなり久しぶりだ。

久しぶりの”知っている人”とのわずかな時間が余計に一人の時間を孤独にさせた。