愛してしまったので離婚してください

日本に戻ってから私にはもう一つやらなければならないことがあった。
私がこの場所にアパートを借りたのにも理由がある。
それは近くに、大きな総合病院があるから。

ニューヨークの病院の担当医は、まだ安定期と呼ばれる妊娠中期に入っていない私が飛行機で日本に一人帰ることを賛成はしなかった。
私も妊娠初期での移動がどれだけのリスクを伴うか自分なりに調べた。

でも、あまり時間に猶予はなかった。

日本に戻った翌日、私は前もって予約をしていたその総合病院に、ニューヨークの担当医が書いた紹介状を持って向かった。



私の左手の薬指にはお守りのように指輪をはめている。
結婚5年で雅からもらったダイヤの指輪。

病院に向かうタクシーの中でも光を反射してきらきらと繊細に光っている指輪。
その指輪をギュッと握るだけで、勇気がわくような気がした。