慌てて雅に背を向けて、私は流れてしまった涙を手で拭う。

早くお礼を言わなくてはと、何度か深呼吸をしていた私を、雅は後ろから抱きしめた。

戸惑うように、優しく、そっと抱きしめる雅。
そのぬくもりに、私はそれまで我慢していたものが溢れて止まらず、自分の手で口を覆って泣き声が漏れるのを我慢しようとした。

その瞬間雅は私の体を自分の方に向けて、私の口元を覆っている手をそっと握った。
つめたい手。

どれだけ急いできてくれたかが分かる。
いつだってそうだ。
雅はきっと家に帰ると私との約束を守ろうと、かなり努力をしてくれているのだろう。
でもつらそうな顔も、疲れた表情も見せない。

はじめは私に対しての感情があまりないのかと思っていたけれど、それは私の勘違いだったと気づいたのは結婚してから3年が過ぎてからだった。