私と雅は1年ほど前から体を重ねるようになった。

結婚式は誓いのキスも、誓いの言葉もない簡略化したものだった。
手を繋いで歩いたこともない。
バージンロードで腕を組んで歩いたくらい。

雪の日に、私の唇に触れたのは彼の唇だったのかはわからない。

そんな状態でも、あの雪の日以来、雅は忙しい仕事の合間を縫って家に帰ってくれるようになった。
帰ってきても玄関から部屋に入ったと同時に病院から呼び出されたこともある。
それでもいいと、必ず彼が返ってきたときに飲めるようにコーヒーを用意したり、すぐに食事が作れるように用意をしていた。

ほとんど結局彼の口に入ることはなくても、用意している待っている間は心満たされて孤独を感じなかった。

初めて彼と体を重ねた日のことを、私はよく覚えている。

あの日は私の28回目の誕生日だった。