あっという間にタクシーが家について、私たちはタクシーを降りた。

結局あの日から雅は数えるほどしか家には帰ってこなかった。
帰ってきてもすぐに病院から呼び出されて戻ったり、予定されているオペに合わせてまだ地下鉄も動き出していない時間にタクシーで病院へ戻って、ゆっくりと24時間家に居られたことはない。

家の玄関のカギをバックから出そうとすると雅が先に開けた。

雅がカギを開ける姿すら初めて見たなんて、ぼーっと考えていると、雅は玄関の扉を開けて私に先に部屋に入るよう促した。

家の中はちゃんと家具が置かれたままになっている。
まとめた私の荷物はあまりに少なくて、自分でも驚きながら昨日のうちに運送会社に引き取りに来てもらった。

この部屋に残っている私の荷物は小さな旅行鞄ひとつ分だけだ。