愛してしまったので離婚してください

疲れた顔をして帰宅した雅はすぐに洗面台に向かって手を洗い、うがいをした。
何気ない行動でも、私の体調を気遣ってのことだろうとわかる。

「ただいま」
洗面所にいる雅の後ろに立ち、待っていた私の方を振り向いた雅は、そう言ってふっと笑った。
「おかえりなさい。」
何となく、離れていた時間がニューヨークでの私たちの関係に少し戻したような距離を感じる。
「ただいま」
そう言って雅は私の体を抱き寄せた。

少し消毒のにおいのする雅。
「体調は?」
「変わりないです」
「そっか。お腹が張ったり立ち眩みしたり、頭痛がしたりしてない?」
「してません」
「よかった」
電話でもメールでも何度も聞かれた体調。