愛してしまったので離婚してください

「晶」
その声に瞳を開けると、そこにはスーツ姿の雅が私の顔を覗き込んでいた。
「俺、病院に出勤してくるな。帰りは夕方か夜だと思う。何かあったらすぐに連絡してくれよ?」
「・・・はい」
私の髪を撫でながら、雅がふっと笑う。
「本当は起こさずに行こうかと思ったんだけどさ、それじゃ同じだから。あの頃と。」
雅が言っているのはニューヨークでの日々だろう。
「それから、何もなくても連絡してくれよ?俺も連絡するから。寝てたり、体調が悪かったら無理して出なくていいけど、電話もするから。」
「うん」
雅なりにかなり気遣ってくれていることが分かる。
「じゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい」
雅は私に口づけてから寝室を出た。
その時、部屋を出るまで私に背中を向けなかったのも、雅の気遣いだと思いながらも、私は久しぶりに一人のベッドを実感して寂しさを感じずにはいられなかった。