愛してしまったので離婚してください

彼の病院での姿を一度だけ私は見たことがある。

それは大雪の降ったニューヨークの街中で、転んで意識を失ってしまった時。

目を覚ますとそこには術衣姿の雅が険しい顔をして私を見つめていた。


思わず状況が飲み込めずに雅から視線をそらした私。

目の前の大きな荷物を持った老人が階段を落ちそうになっているのをかばおうと手を伸ばしたところまでは記憶がある。もしかしたら、救急車で運ばれて、運悪く雅の病院に運ばれてしまったのかもしれないとか・・・いろいろと記憶がない時間のことを考える。

「痛みは？」
「・・・平気です・・・」
頭上から落ちてくる冷たいくらいの低い声に少し動揺しながら答える。

横になったままだと失礼かもしれない。
私が横になっているベッドから体を起こそうとすると強い力でベッドに体を戻された。