愛してしまったので離婚してください

「俺が好きなとこ。そうやって、誰かのことを真剣に想える。人の痛みを自分の痛みのように感じる。さっきの言葉、俺は晶の想いがすっごい伝わってめちゃくちゃ嬉しい。それだけ俺、愛されて想われてんだから。」
「でも…」
雅の胸のなかで反論しようとする私を雅は更に強く抱き締めた。

「いつだって、家に帰れば温かいご飯と俺の好きなコーヒーが用意されてた。日に日に俺のコンディションを考えたメニューになってることちゃんと気づいてた。勉強してくれてたんだろ?」
「……」
「靴も部屋もぴかぴかで、布団はいつだってふかふかだった。」
そんなことくらいしか私にはできなかったからと心で反論する。

「救えたかもしれない命がこの手からこぼれ落ちたとき、家に帰ると晶がいつも笑顔で迎えてくれた。温かいご飯と空間に、俺がどれだけ、また立ち向かう勇気と力もらったか。いつの間にか、家に帰るのが楽しみになって、晶の顔が見たくて、必死に仕事を終わらせるようになった。」