愛してしまったので離婚してください

雅が医者を目指したきっかけも知らずに、私は今までただ”妻”という名前に腰かけていただけだと思った。ニューヨークの病院でほとんど家に戻らずに病院で、倒れるまで努力する雅の気持ちを、本当は理解なんてできていなかった。
どうしてそこまでほかの誰かの命のために、努力ができるのかと、私とは違う感覚を持っているのかもしれないとすら思っていた。

雅の過去も、気持ちも、想いも、知る努力すらしていなかったことを恥じた。

「俺と同じ想いをする人を一人でも減らしたい。まだまだ日本の医療は古かったり、頭が固いことがたくさんあって、でもニューヨークの病院で根本から考えを覆されることが山ほどあったんだ。勉強になるなんてもんじゃなかった。」
嬉しそうに振り返る雅。私は心の中で、雅の背中を見送る時、大きな声で頑張ってと言えばよかったと後悔した。
「その間、晶には寂しい思いばっかりさせて、ごめん。」
雅の言葉に私は思い切り首を横に振る。