愛してしまったので離婚してください

「母は心臓にガラス片が刺さっていて、父は頭部外傷による脳挫傷を起こしていた。」
雅の両親は二人で出かけて、帰宅するときに自動車と大型トレーラーとの事故で亡くなったことも私は初めて知った。
「爆発事故の患者も外傷患者が多くてどこの外科も手一杯で、俺の両親は救急車に乗り込んでから搬送先が見つからずにしばらくいたらしいんだ。」
状況を想像するだけで痛々しい。

「やっと搬送先として受け入れてくれたのが、藤川病院だった。」
雅はふっと微笑んで私を見つめる。

この5日間、毎晩雅はこうして私の髪を撫でて、私が眠りにつくまで話をしたり、微笑みかけてくれていた。

「もう病院についた時には両親は瀕死の重体で、手の施しようがなかったって、俺はじいちゃんから聞いた。当時幼かった俺は、病院で両親に合わせてももらえず、廊下で祖父母と一緒にただ待つことしか許されなかったらしいんだ。」
雅がまだ6歳の時の出来事だったらしい。覚えていなかったことがもしかしたら幸いなのかもしれないとも思ってしまうつらい記憶。きっと本人はもっとつらいだろう。