それから…

ずっと気になってた



「宙くんに嘘ついてたことがある」



「なに?」



「宙くん
私が『晴』だから
私を選んでメッセージくれたって言ったけど
ホントは私、晴夏なんだ

晴れるに夏で晴夏

晴って、いつもあの人が呼んでくれてたから
プロフィール『晴』にしたの

それから…
あの人が亡くなったのが夏だったから…
私の名前、嫌だった」



「そーなんだ…」



「ごめんね
あの時、すぐに言えなかった
宙くんを裏切る気がしたし
言ったら、もぉ会えないかな…って…

でも、言わないのも結局裏切ってるし…
気になってて…」



「別に、晴さんは晴さんだし…
晴とは違うから…

今日わざわざ言ったってことは
オレともぉ会わなくていいや…って思った?

他に誰か、会いたい人できた?」



バリ…

宙くんが飲んでたビールの缶を潰した



「んーん…
そんなことない」



宙くんをずっと騙してることが悪いと思った

純粋な宙くんを

もぉこれ以上騙したくないな…って


それでもし

宙くんが私にもぉ会わないって言ったら…



会わないって言ったら…



宙くんに会えなくなったらヤダな…って

今思ってしまった



私はまだ

あの人が忘れられなくて


宙くんは

自由なのに


私に会うのも

会わないのも


他の誰かに会うのも

宙くんの自由



なのに…



「宙くんは?」



私以外の誰かと会ったりしてる?

気になる



聞けない



「なに?」



「初恋の人に会いたいと思わないの?
せっかくこの世界にいるのに…」



「うん…
前にSNSで晴を見つけたんだ

海外でバレエのレッスンを受けてる
子供の頃からバレエやってるって言ってたから
ずっと頑張ってるんだな…って

オレのことも探してくれてないかな…って
思ってたら
晴からメッセージがきた」



「ホントに?すごい!
想いが通じたんだね

それで?
会ったりとか…
また再会して…」



「会わない

お互い頑張ろうね…って

晴もオレも頑張ってることあるから
それでよかった」



羨ましくなった



あの人はもぉ

私を探してなんかくれない


あの人にメッセージを送っても

もぉ返ってくることはない



「会おうと思えば会えるのに
なんで、会わないの?」



海外でも

何時間かかっても

何日かかっても

会いたければ会えるのに…



「あ、ごめん…」



また

私の感情を宙くんにぶつけてしまった


宙くんは何も謝ることなんてないのに…



「んーん…ごめんね

私も、何か頑張ろうかな…」



これといった趣味もなくて

あの人しかなかった




他に夢中になれることがあったらいいのに…