「もぉすぐ終わるから
ちょっとだけ待ってて…」



宙くんは

部屋にある機材の前で

ヘッドホンを耳に当てて仕事してた



そこにはどんな音が流れてるんだろう

黙って宙くんの後ろ姿を見てた



今まで見たことない宙くん

今日は寂しそうじゃない



すぐ前にいるのに

ここにいないみたい



違う世界にいるみたい



趣味はないって言ってたけど

仕事が好きって言ってた



自分の好きなことを仕事にしてる人って

カッコいいな



あの人は旅館の仕事

好きだったかな?


老舗旅館の跡取りって

きっとすごい重圧だよね


私が若女将になってたら

今頃どうしてたんだろう


なんて…

選ばれなかったのにね



晴…

また思い出す



晴…

晴…



「晴さん…晴さん…」



「…ん?」



「終わったよ
お待たせ」



「おつかれさま」



「晴さんから来たいって言ってくれて
嬉しかった」



頬に宙くんの手の温もりを感じた



宙くんと

同じ世界にいる